研究紹介の一覧へ戻る

進行中2026年11月 〜卒業研究

観戦方針に基づき意見を示すAI観戦パートナーの設計と評価

独自の観戦方針に基づいて意見を示すAI観戦パートナーを設計します。AIの意見の示し方が、観戦の楽しさや観戦相手としての印象に与える影響を検証します。

eスポーツの試合を観戦しながら、ユーザーとAIがプレーへの意見を交わすイメージ

この研究のポイント

  • 一貫した観戦方針に基づいて意見を示すAI
  • ユーザーに同調するAIとの共同観戦体験の比較
  • 観戦の楽しさや、相手が一緒にいる感覚の評価

背景

スポーツやeスポーツの観戦では、試合の展開を楽しむだけでなく、他者と感想や意見を交わすことも楽しみの一つです。オンラインのスポーツ観戦でも、試合中の出来事の評価や予測、戦略について意見が交わされています1。同じプレーを見ていても、注目する点や評価は人によって異なります。その違いが、プレーを別の視点から捉えたり、会話を広げたりするきっかけになります。

近年では、LLMを用いたAI観戦パートナーによって、観戦の楽しさや対話への関与を高める試みも行われています2。本研究では、ユーザーの意見に同調するだけでなく、AI自身が一貫した観戦方針に基づいて意見を示すことで、一人で観戦する場合にも、異なる視点を持つ相手と意見を交わす体験を実現できるのではないかと考えています。

目的

AIが独自の視点を示すことは、観戦中の会話を豊かにする可能性があります。映画鑑賞を対象とした研究では、異なる視点を持つAIとの対話が、多様な解釈の探索につながる可能性が示されています3。一方で、ユーザーに反対するAIは、同意するAIよりも機械的で、感情理解能力が低いと評価される傾向も報告されています4。そのため、方針を持つAIが観戦相手としてどのように受け止められるかを確かめる必要があります。

本研究では、一貫した観戦方針に基づいて意見を示すAI観戦パートナーを設計し、ユーザーに同調するAIとの比較を行います。この比較を通して、AIの意見の示し方が、観戦の楽しさや、相手と一緒に観戦している感覚、AIに対する印象に与える影響を明らかにすることを目指します。

手法

大規模言語モデル(LLM)を用いて、ユーザーと同じ試合の状況を踏まえながら対話するAI観戦パートナーを構築します。現在は、eスポーツの録画映像を対象に、観戦しながら感想や意見を交わせる仕組みを検討しています。

AIの観戦方針として、プレー時の状況や選択の妥当性に注目する「判断過程重視型」と、プレーによって得られた結果に注目する「結果重視型」を検討しています。これらは、同じプレーに対しても評価が異なり得る方針の例として設定するものです。

実験では、こうした方針に基づいて意見を示すAIと、ユーザーに同調するAIとの共同観戦体験を比較します。意見の示し方による影響を調べるため、AIの口調や発話量など、方針以外の条件をできるだけそろえます。

評価には、共同観戦後の質問紙と対話ログを用いる予定です。BleacherBotの評価方法2を参考に、観戦の楽しさや相手と一緒に観戦している感覚を調べます。さらに、AIへの印象に加え、AIが独立した意見を持ち、一貫して発言していると感じられるかを確認します。

今後の予定

まず、試合の状況に沿って対話できるプロトタイプを構築し、AIが設定した観戦方針に基づいて応答するかを事前に確認します。そのうえで比較実験を行い、ユーザーとの意見の一致や不一致も踏まえながら、共同観戦体験への影響を検討します。

これらを通して、ユーザーと意見を交わす観戦相手として、AIがどのように振る舞うことが望ましいかを考えていきます。

参考文献

  1. Minsam Ko et al. “Understanding Mass Interactions in Online Sports Viewing: Chatting Motives and Usage Patterns.” ACM Transactions on Computer-Human Interaction, 2016. ↩

  2. Kyusik Kim et al. “BleacherBot: AI Agent as a Sports Co-Viewing Partner.” Proceedings of CHI 2025, 2025. ↩ ↩2

  3. Jeongwoo Ryu et al. “Cinema Multiverse Lounge: Enhancing Film Appreciation via Multi-Agent Conversations.” Proceedings of CHI 2025, 2025. ↩

  4. Atakan Atamer, Olivia Pinto, and Priti Shah. “From Ally to Algorithm: How Disagreement Shapes Users Engagement with AI.” Computers in Human Behavior Reports, 23, 101252, 2026. ↩