プログラミング学習に対する成長マインドセットを育む学習支援システムの設計と評価
プログラミング学習では試行錯誤が不可欠ですが、苦戦が続くと学習意欲の低下や挫折につながる懸念があります。本研究では、成長マインドセットに着目し、日常的な開発環境上で学習者の試行錯誤の過程を支える支援システムの設計と評価に取り組んでいます。

この研究のポイント
- 成長マインドセットを育むことを意図した学習支援システムを設計・開発する
- Visual Studio Code 上で学習中の操作を捉え、リアルタイムにフィードバックを返す
背景
初学者にとって、エラーへの対処やデバッグを伴うプログラミング学習は難しい活動です1。学習における問題解決の停滞はフラストレーションや学習からの早期離脱につながります2。
これまで、学習者への技術的な支援は数多く提案されてきましたが、学習者の意欲や心構えといった心理的側面への支援は十分に検討されていません3。また、心理的側面に着目した取り組みの多くは学習前後の働きかけにとどまっており、コーディング学習中にリアルタイムで介入する事例は限られています。
そこで本研究では、能力は努力や試行錯誤によって伸ばせると捉える成長マインドセット45に着目し、学習中の問題解決プロセスを支える学習支援システムを検討します。
目的
本研究の目的は、プログラミング学習者が学習中の苦戦を肯定的な学習過程として捉えられるよう支援する、開発環境組み込み型システムを設計・実装し、その有効性を明らかにすることです。
具体的には、学習中の試行錯誤に対するシステムからのフィードバックが、プログラミングに対する学習者のマインドセットや、困難な課題に直面した際の問題解決行動にどのような影響を及ぼすかを検証します。
手法
最終的な正誤結果だけでなく、問題解決過程における努力や試行錯誤を評価・承認する先行研究の知見678を踏まえ、Visual Studio Code(VS Code)上で動作する拡張機能を開発します。
従来の学習ゲーム環境を用いた介入研究とは異なり、実際のプログラミング演習や開発で広く用いられるエディタ環境を対象とすることで、自然な学習を妨げない支援を目指します。システムは TypeScript で構築し、コードの編集や実行といった日常的な開発操作を捉えて、努力や試行錯誤に関する視覚的なフィードバックを提示します。プログラミングツールからのフィードバックを擬人化することで学習を支援できる可能性も報告されており9、本研究ではその知見も参考にします。
評価では、質問票を用いた心理尺度の測定と、課題に取り組む過程の分析を組み合わせ、システムの利用が学習者のマインドセットや問題解決行動に与える影響を検証します。
成果
現在は、VS Code の拡張機能として学習中の操作を取得し、フィードバックを提示するプロトタイプの設計・実装を進めています。今後は、プロトタイプを用いた評価実験を行い、学習者の試行錯誤を支えるフィードバックの設計指針を明らかにすることを目指します。
2026年度の学部・修士研究として進めている研究です。
参考文献
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E. Lahtinen, K. Ala-Mutka, and H.-M. Järvinen, A Study of the Difficulties of Novice Programmers, Proc. ITiCSE ’05, pp. 14–18 (2005). https://doi.org/10.1145/1067445.1067453 ↩
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E. O’Rourke et al., Brain Points: A Deeper Look at a Growth Mindset Incentive Structure for an Educational Game, Proc. L@S ’16, pp. 41–50 (2016). https://doi.org/10.1145/2876034.2876040 ↩
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M. J. Lee and A. J. Ko, Personifying Programming Tool Feedback Improves Novice Programmers’ Learning, Proc. ICER ’11, pp. 109–116 (2011). https://doi.org/10.1145/2016911.2016934 ↩