僕たちの体はどこまで情報化できるのか?

column M2

M2 の荻野です。今日から当番制で研究室の学生が日々の研究や学んだことをアウトプットするコラムを書くことになりました。

最初の担当は私荻野が担当します。

知らずに発する、あなたの情報

皆さんは「IoT」という言葉をご存知でしょうか。「単語は聞いたことあるけど、実際の意味を知らない」という人も中にはいると思います。

IoT とは "Internet of Things" の略で、日本訳では「モノのインターネット」と呼ばれます。

モノのインターネットとは、コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在する様々な物体(モノ)に通信機器を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。

https://e-words.jp/w/IoT.html より引用

最近ではペットに餌を遠隔であげることができるマシーンや、外出先からでも自宅の鍵をかけることができるマシーン、朝になったらカーテンを自動で開けてくれるようなマシーンなどユニークな IoT デバイスがたくさん発売されています。

僕自身も、自分の部屋にスマートスピーカーとスマートリモコンがおいてあり、「アレクサ、電気つけて」というと部屋の電気をつけてくれます。


朝起きた時に声だけで照明を操作できるのは、体験としてとても良いです笑

そんな身の回りにあると便利な IoT デバイスですが、今回の記事でフォーカスするのはその中でも生体情報を測定できるデバイスです。

皆さんはウエアラブルデバイスと聞いた時に、何を思い浮かべるでしょうか。

大半の人はスマートウォッチを想像するんじゃないかなと思います。

Apple Watch や Fitbit など、スマートウォッチには様々な種類があり、その機能は心拍数や運動量のモニタリングなど、年々高性能化しています。

心拍数や体温といった、人が自然と発している情報は生体情報と言われ、生体情報を用いることでウエアラブルデバイスであなたの体調などがモニタリングできるのです。

では、最近の研究や製品では、あなたの生体情報はどこまで正確に、どんな種類のものを取得できるのでしょうか?

心拍数

スマートウォッチの裏面に内蔵されている光学式心拍センサーは、手首に LED の光を照射し、血流によって反射される散乱光の量を測定します。

心拍数は様々な要素と相関があります。例えば、以下のようなものです。

  • ストレス
  • ホルモンバランスの乱れ
  • エネルギー消費
  • 心血管疾患死亡リスク etc...

参考:

血中酸素濃度

血中酸素濃度とは、赤血球によって全身に運ばれる酸素の量を測定し、その値をパーセンテージで示したものです。

酸素は、ヘモグロビンと呼ばれる赤血球の中のたんぱく質と結合して体内で運搬される。人が呼吸をすると、肺からの酸素が赤血球に取り込まれ、酸素をたくさん含んだ血液が心臓のポンプ作用によって全身に送り出される。この新鮮で酸素が豊富な血液が、脳から足のつま先まで全身を機能させ、健康を保つ役割を果たしている。 https://wired.jp/2020/12/06/how-to-use-blood-oxygen-data-on-apple-watch-garmin-fitbit-samsung/ より引用

血中酸素濃度は登山やマラソンなど、体内の酸素が低下する危険性のあるスポーツをやっている人たちにとって必要な値ですが、医療の現場でも呼吸器疾患がある人の状態を監視するためには重要な指標となります。

血圧

ここ最近の発表で、Fitbit 社がスマートウォッチ単体で血圧測定可能かを確認する公開研究を開始しました。

参考: スマートウォッチのみで血圧測定可能に?Fitbit Sense が公開試験開始

血圧は言わずとしれた生体情報であり、高血圧は日本人にもっとも多い病気とされています。

高血圧は自覚症状がほとんどなく、気づかないためにこういったウエアラブルデバイスで測定できるようになるということは患者にとってはとても嬉しいしらせでしょう。

体温

コロナウイルスの流行により体温というものは危険度の指標としてもっとも普及しており、それに伴ってウエアラブルデバイスでも検温が可能なものも登場しています。

参考: 検温できるウェアラブル端末で学校再開を支援。±0.1°C の高性能、複数同時測定可能。With コロナに向け、生徒と教職員の健康を守る対策を 〜株式会社大倉〜

サーモグラフィーや体温計で個別の測定に時間がかかっているのが現状ですが、その状況も近いうちにはなくなるかもしれません。

脳波

以前までは脳波の計測には大きな機械を頭部に取り付けなければなりませんでしたが、最近では脳の活動もウエアラブルデバイスによって計測することが可能になっています。

muse 社の Muse 2 は、瞑想を目的としたデバイスとして販売されていますが、専用のアプリと一緒に用いることで δ 波や β 波などの各周波数の脳波を測定することができます。

参考:

視線

「目は口ほどに物をいう」と言われる通り、私たちが何気なく送っている視線も一つの生体情報になります。

視線の計測にはメガネ型のデバイスや PC に取り付けるデバイスなど多様な種類があり、その精度も年々向上しています。

最近の研究では、視線や表情をカメラで読み取ることで集中度を人工知能により推定し、リモート授業の質を向上させるなどの試みがなされています。

参考:

まとめ

今回は 6 種類の生体情報を紹介しましたが、これ以外にも足圧や発汗、呼吸、声など様々な情報を取得することができ、それらをモニタリングするデバイスは近年爆発的に増加しています。

こういったデバイスを適切に使うことで、人間が機械に合わせるのではなく機械が人間の情報を読み取り人間にとってよりよい世界になるように合わせてくれるようになるかもしれません。

また、僕自身が研究テーマとしている「運動による認知への効果」を実社会に適用する場合、かならずこういった生体情報は必要不可欠な存在になると思っています。

年々速度が増すデバイスや技術の進化においていかれないよう、研究も進めていきたいですね。

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