料理が苦手な人の特徴の一つに、"レシピを再現しない"という特徴が挙げられます。
加熱時間をてきとうに済ませたり、味付けを勝手にアレンジしてみたり、、なぜレシピに忠実になれない人がいるのでしょうか?
レシピを再現しない人の心理を予想してみます。
どうしてこのような心理が働くのか、認知バイアスの観点から考えます。
クレーンゲームで遊ぶとき、数百円支払っても景品がゲットできないと、ついつい景品が取れるまで挑戦してしまいませんか?
これは「コンコルド効果」と呼ばれる認知バイアスの一種です。続けるとより多くの損失が出るとわかっていても、それまでの投資が惜しくなり投資をやめることが難しくなることを意味します。
このような非合理的な判断を脳が無意識的に行ってしまう、その顕著なパターンを認知バイアス(または単にバイアス)と呼びます。
という2種類の認知バイアスを紹介します。
テスト前に全然勉強しなかった時ほど、テストに対して不思議と自信が湧いてきませんか?
能力の低い人ほど自らの成果を過大評価し、能力の高い人ほど自らの成果を過小評価する、というのがダニング=クルーガー効果です。少し勉強しただけの人はテスト範囲の全体像を見ることができず、自分にどれだけ知識が足りないのか判断できません。そのため、テストに対して実際よりも知識備わっていると思い込んでしまうようになります。
料理に対して知識の少ない人は、実際よりも自分には料理の技術がある、と考えています。こうした過剰な自信が、レシピを再現する謙虚さを失わせているのかもしれません。
次のような実験結果が明らかになっています。
ラット、魚、鳥、スナネズミ、ハツカネズミ、サル、チンパンジーなど、多くの動物が、短い直行ルートでエサを得るより、長い迂回ルートを通ってエサを手に入れるのを好むことがわかった。(その後行われた多くの実験もこれを裏付けている)つまり、魚、鳥、スナネズミ、ラット、ハツカネズミ、サル、チンパンジーは、極端な重労働が必要でないかぎり、自分で食い扶持を「稼ぎ」たがることが多かったのだ。
(不合理だからすべてがうまくいく, 2010, 櫻井裕子訳, p.87)この実験が意味するところは、動物は楽に手に入れた報酬よりも苦労して手に入れた報酬の方を好むということです。さらにこの結果は人にも適用されるということがわかっています。
人は、シンプルなレシピを再現しようとした際に、もっと手の込んだ(=苦労した)料理の方へ魅力を感じてしまい、様々なアレンジを加えるのかもしれません。
料理が苦手な人の真理から派生して、2つの認知バイアスを紹介しました。
これらのバイアスを知らないままでいると、無意識下で行われる非合理的な意思決定を見逃してしまうことになります。
認知バイアスは防ぐこともできるということがわかっています。例えば、ダニング=クルーガー効果で問題に挙げられている自己評価のズレは、他者からのフィードバックによって修正することができます。
温泉卵を作ろうとして、レシピの加熱時間を無視してどろどろの生卵を作ってしまった過去は、認知バイアスを知っていれば防げたのかもしれません。
参考文献: