動機付けと職業選択

column M2

就活中や職業選択で悩む皆さん、「自分自身のモチベーションの維持」を考慮して職業選択をしていますか?
今回は、エンハンシング効果とアンダーマイニング効果という2つの心理的な現象から、モチベーションを維持するための職業選択について考察してみたいと思います。

まずは動機付けと2つの心理現象について紹介します。

内発的動機付けと外発的動機付け


人間の行動の動機付けには、外発的動機付けと内発的動機付けがあります。
外発的動機付けとは、報酬や罰則、評価といった課題に直接紐付いていない外的な要因による動機付けのことです。
内発的動機付けは、課題に対する好奇心や興味など課題に直接結びついた要因による動機付けのことです。
一般に外発的動機付けの効果は短期間で大きく表れ、内発的動機付けの効果は長期間で持続することが知られています。

エンハンシング効果 (Enhancing Effect)


外発的動機付けによって内発的動機付けが高まることをエンハンシング効果といいます。例えば、人から褒められることで勉強のモチベーションが高まったり、給料が上がることで仕事のモチベーションが高まることがこれに該当します。

アンダーマイニング効果 (Undermining Effect)


内発的動機付けによる行動に外的報酬が与えられるようになると、人間の内発的動機付けは減衰する場合があります。これをアンダーマイニング効果といいます。

有名な例では、幼児のお絵かきの実験[Deci, 1985]があります。
この実験では、絵を描いている幼児達に対し、上手く絵を描けた報酬としておやつをあげた場合とあげなかった場合を比較しました。
結果として、おやつを与えられていない子供たちは今まで通り絵を描き続けていましたが、報酬を与えられ始めた幼児は報酬がなければ絵を描かなくなってしまったのです。 このように内的→外的と言う風に報酬が変化すると、動機付けが下がってしまうことがあるのです。
仕事で言えば、好きな事を仕事にすると報酬を安定させるための活動が多くなり、好きな事があまり楽しくなくなってしまうというようなことを指します。
歌手の方はよく「プロになるとカラオケが楽しくなくなる」といいます。これもアンダーマイニング効果の一つといえます。

アンダーマイニング効果が起こる原因の一つは、「自己決定感の喪失」と言われています。 外的な報酬が与えられることによってエンハンシング効果が期待できますが、報酬が過剰になったり、報酬の与えられ方が不適切な場合、「やらされている感」によってアンダーマイニング効果が起きてしまうのです。

職業選択への応用


モチベーションの維持という観点では、アンダーマイニング効果を避け、エンハンシング効果が期待できる職業選択が望ましいと考えられます。そこで、以上述べたような心理現象に基づいた職業選択の方法をいくつか提案します。

・好きな事と別の仕事で生計を立てる

前述のように、好きな事を仕事にするとアンダーマイニング効果が発生してしまう恐れがあります。そこで、お金を稼ぐための仕事は別につくり、好きな事の目的がお金にならないようにします。これにより、好きなことに対する持続的なエンハンシング効果が期待できます。IRSの記事には趣味とビジネスを分ける9つの質問を用意されており、自身の活動が趣味である場合、副業によって収入を得ることで金銭面での恐怖を和らげ、活動に没頭できることが述べられています。

・経験のない世界に飛び込んでみる

そもそも内発的動機付けがなければアンダーマイニング効果は発生しません。よって初めて経験する分野の仕事では、報酬や評価によってモチベーションが高まり、さらに後から仕事の面白さややりがいにも気付いていくことができます。GAテクノロジーズの樋口CEOは、幼い頃より世界的なサッカー選手を目指し、ジェフユナイテッド市原(現J2)に育成選手として所属しましたが、24歳でサッカー選手としての夢を諦め、ビジネスマンに転身し、のちに会社を設立し不動産事業に参入しました。現在では売上200億円を超える企業へと成長させています。樋口氏のインタビューによると「会社員時代、厳しい上司に叱られたが嫌じゃなかった」そうです。これは新しい環境に踏み込むことで、報酬や評価が自分自身のモチベーションを高める状況を作り出した良い例といえます。
この方法の場合、自身のスキルと仕事の難易度のギャップが大きいと、逆にモチベーションを低下させる要因となるので注意が必要です。

・動機付けを意識した評価制度のある会社を選ぶ

これはメタな解決策ですが、動機付けのための方法としては最も現実的かもしれません。動機付けを意識した評価制度が敷かれている企業が存在します。例えば皆さんご存知のGoogleは人事評価を同僚の定性評価に基づいて行うことで適切な報酬設定を心がけ、個人の仕事に対する動機付けを促進しています。また、株式会社ゆめみは、社員の給与を申告による自己決定とすることで、報酬金額の不満による動機付けの低下を予防しています。 このような環境に身を置くことで、自分自身の動機付けに関して、自分1人ではなく上司や人事の方と共に考え続けることができます。動機付けについて直接的に議論することができれば、モチベーションを維持できる環境づくりを自身で行なっていけるでしょう。

最後に


今回は、動機付けに基づいた職業選択を考えました。
本記事が皆さんのモチベーションを考えるきっかけになれれば幸いです。

文責:池田

<参考文献・サイト>

  • Decl, E. L. & Ryan, R. M., 1985 Intrinsic motivation and self-determination in humanbehabior. plenum Press.
  • Side Income: Is It a Hobby or a Business? https://www.moneyunder30.com/side-income-hobby-or-a-business
  • GA technologies 樋口龍さんの語る不撓不屈の仕事論 https://keyplayers.jp/archives/3592/
  • WORK RULES! / LASZLO BOCK

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