会議は”準備”で差をつけろ

column B4

こんにちは、B4の笹川です。

9月末に卒業研究の中間発表が終わり、漸く研究の方向性が決まりました。

現在、私は遠隔会議における進行や記録の支援について研究を進めています。

そして11月といえば、本校ではB3が所属する研究室を決める大事な時期ですね。

そこで今回の記事では、本研究室のゼミで実践的に学んでいる”ファシリテーション”という会議手法について、ゼミの紹介も兼ねてお話ししていこうと思います。

はじめに


皆さんは「グダグダ会議」というものを体験したことがあるでしょうか?

フォーマルな会議に限ったものではなく、学生であればグループワークでの話し合い等でも良いので思い返してみてください。

特定の人ばかりが延々と喋っていたり、沈黙の時間が続いたり、他にも内職をしている人や寝ている人がいて進行がグダグダになってしまっているような会議に覚えはありませんか?

「何について議論しているのかわからない」、「何が決まったのかわからない」など参加者の認識が曖昧なまま進行・終了してしまう会議が有意義でないことは明らかですが、このような会議が世の中に溢れ返っているのもまた事実でしょう。

そんな会議を”円滑”に進行する技術・手法を”ファシリテーション”といいます。

ここで注意していただきたいのが、ファシリテーションは飽くまで会議を円滑に進めるための工夫全般を指すものであるという点です。

つまり、ファシリテーションとは会議中に行うだけのものではないのです。

会議”前”のファシリテーション


ワークショップにおいてファシリテーションをする困難さの認識について調査した研究(参考4)では、初心者〜熟達者がプロセス毎に感じるファシリテーションの困難さが次の図1のように評価されています。

この図の中で注目していただきたいのは、開始前の困難さだけは熟達者が最高値の評価をしているところです。

当論文ではこの結果に関する要因として、参加者に合わせたファシリテーションを考えるのが難しいという意見が述べられていました。

初心者や中堅も準備の重要性は理解しているはずなので、これだけ差が生まれるということは会議前の準備が非常に奥深いことがわかりますね。

まったくの素人をこの調査対象に加えた場合、開始前の困難さの評価値がさらに低くなるのではないでしょうか。

少なくとも、私は本研究室に所属するまで会議前の準備を意識して行うことはありませんでした。

そこで本記事では、会議前に行うファシリテーションについて本研究室の進捗ゼミを例に挙げてまとめてみました。

進捗ゼミ

本研究室の進捗ゼミでは、二週間分の進捗を報告します。

このとき、ゼミ生を2チームに分けてそれぞれP(プレゼンター)とFG(ファシリテーション・グラフィカー)を担当し、一週間毎に役割を交代するのでP担当の時に二週間分の進捗を報告することになるというわけです。

それぞれの役割についてですが、まずPは主に次の3点について発表します。

  • 雑談
  • これまでの二週間でやったこと
  • これからの二週間でやるべきこと

FGは発表後にこれらの内容に対して質疑とコメントを募って記録します。

準備すべき4つのP

では具体的に何を準備すれば良いのでしょうか。

一説(参考1)として、会議前に以下の4つのPを確認する手法があります。

  • Purpose
  • People
  • Process
  • Property

では、それぞれについて進捗ゼミを例に説明します。

Purpose

Purposeとは、会議の終了状態を指します。

ここで目的と言ってしまうと、進捗ゼミでは「進捗の報告をすること」などと少し曖昧な定義されてしまう可能性があります。

これを終了状態と言い換えることで、「発表者の進捗と次回までにやることを全員が把握し、連絡事項も伝達できた状態」というように具体的な会議の指針が完成します。

終了状態を決めることで、資料の構成が一意に定まったり、発表を聞く参加者が報告のどの部分を注意して聞けば良いかが明確になったりして、発表者と参加者の意識に統一感が生まれます。

People

Peopleは会議参加者の情報のことです。

理想的な会議では、上で定義した終了状態を満たすために必要な参加者だけを集め、各参加者の議題に対する理解度や疑問・不満をあらかじめ予想しておくことで会議を円滑に進めることができます。

進捗ゼミのような学生全員が参加する定例会議では少し条件も異なりますが、PとFGのペアと発表順を事前に決めておくことでスムーズにゼミを始められるようにしています。

また、ゼミが長引くことも考慮してゼミ後に用事がある学生を前に回すなどの工夫もされています。

Process

Processは会議の進行方法に関する項目です。

事前に会議のアジェンダを決めて時間配分をしておくと、テンポよく進行することができ、会議の終わりも意識しやすくなります。

終わりの見えない会議ほど退屈なものもないですからね。

現在の進捗ゼミでは、発表順と発表内容が事前に決まっているので、さらに発表前に前回の振り返りを入れて進捗との対応付けを行ったり、発表後にこれまでにやったこととこれからやることを再確認したりするとより良くなるかもしれません。

Property

Propertyとは、資料やホワイトボードなどの会議に必要なもののことです。

本研究室の進捗ゼミは遠隔で行っているので、主に用意するものはPDF資料とZoom、議事録として利用しているScrapboxの3つです。

加えて、事前にやっておくこととして、GoogleDriveに資料をアップしておくことと、Scrapboxに当日のアジェンダを用意して発表順やペアを各自で確認しておくことが挙げられます。

遠隔会議になってからは画面共有の際に、相手に見えているか不安になったりPowerPointの開発者用ツールの方が映ってしまっていたりしないように、このPropertyの事前確認が対面会議より重要になったように思います。

おわりに


今回の記事で一番お伝えしたかったのは、会議前の準備の重要性です。

当たり前にも思えるかもしれませんが、やってみると存外奥が深いものです。

また、初めにも少し触れましたが、11月頃から本校ではB3が所属する研究室を選ぶ時期でもありますので、今回はB3向けに橋山研の特徴の1つを紹介できたらと思って執筆させていただきました。

研究室選びは研究内容や雰囲気、設備などに注目しがちですが、それ以外にも研究室ならではのものが色々あると思うので、その辺りも参考にすると良いのかなと思います。

文責:笹川

参考

  1. 榊巻亮 世界で一番優しい会議の教科書 日経BP社 2015
  2. 鈴木健 究極の会議 ソフトバンク・クリエイティブ株式会社 2007
  3. 堀公俊, 加藤彰 Facilitation Graphics 2006
  4. 安齋勇樹, 青木翔子 ワークショップ実践者のファシリテーションにおける困難さの認識 2018

Previous Post Next Post