会議の適正人数は?

column B4

こんにちは、B4の笹川です。

ブログのネタどうしようかなーと悩んでいたところ、先輩から面白そうな本を紹介していただきました。

『なぜ僕は、4人以上場になると途端に会話が苦手になるのか』(参考11)という本です。

この本はタイトルの通り、1〜3人までの人とは普通に会話できるのに、4人以上になると途端に苦手意識を覚えるのはなぜか?というあるあるな現象への疑問に対して認知科学や心理学の観点から回答するとともにその苦手意識を克服するための手法を書いています。

主に日常的な会話に焦点を当てており、私自身非常に共感できる内容だったのですが、そういえば会議でも参加人数が増えると上手く回らなくなるのも似たようなことが原因なのかなと不意に思ったので、今回は会議参加者の適正人数について認知科学や心理学の観点から考えてみました。

また、調べ学習をする際参考にした研究も併せて紹介します。

はじめに


会議本の元祖と呼ばれる『How to Make Meetings Work: The New Interaction Method』(参考1)(邦訳『会議が絶対うまく行く法』(参考2))曰く、「3人以上の人がリアルタイムで何かを創り出す共同作業は全部会議」です。

会議には伝達会議、調整会議、決定会議、創造会議などの複数種類がありますが(参考3)、いずれにしても3人以上であれば会議足り得るようです。

では会議参加者数の下限が3人であるとすると、会議として成り立つ上限はあるのでしょうか。

そんな疑問に対して人の数と認知科学・心理学の観点から考えてみます。

3人寄れば文殊の知恵?


そもそも3人以上集めて話し合う意義はあるのでしょうか。

「3人寄れば文殊の知恵」という諺がありますが、実際にこれを支持するような研究も昔から広く行われています。

古くは、1932年のShawによる「宣教師の川渡り」という問題解決型の課題を用いた実験(参考4)があります。それによると、グループは個人に比べて時間はかかるものの高い正解率を示したといいます。

しかし、複数人の集団を集めるときはどんな人でも良いということは無く、多様性のある集団成員を集めることが重要であるということも多くの研究で示唆されています。

多様性が増すことによって、集団として選択できる可能性の幅が広がったり(参考5)、活用できる情報資源が豊かになったり(参考6)、視野が広がったり(参考7)することなどが示されている。

三浦(2002) p.125 より参考の書式を変更して引用(参考8

他にも集団による知的活動には合議的決定や集合知などのメリットが挙げられますね。

上限を考える


ここからは人数を増やすことのデメリットを提示しつつ会議における参加者数の上限について考えていきます。

社会的手抜き

社会的手抜き、リンゲルマン効果、フリーライダー現象、社会的怠惰などさまざまな呼称がありますが、人は集団で共同作業を行うときに一人当たりの生産性が人数の増加に伴って減少することがわかっています。(参考9

皆さんにも身に覚えがあるのではないでしょうか。

校歌斉唱で口パクをしたり、運動会の綱引きで全力を出している振りをしたり、グループワークで誰かが話し出すまで待ったり、私個人としても挙げればキリがありません…

この現象は、当事者意識の低下や評価環境の不当性などが要因となっていることから、個人に対して独立した責任感を持たせ、単独での評価をすることが対策になります。

よって、会議においてはファシリテーターや記録者などの役職を設けることに加えて、その会議に必要な情報を持った人を必要最小限で揃えることが社会的手抜きの防止に繋がりそうです。

数と認知

数と認知の関係といえば「ジャムの法則」が有名ですね。

最初に紹介した本(参考11)にも載っていました。

6種類のジャムを置いた棚と24種類のジャムを置いた棚に対して立ち止まった買い物客が最終的にジャムを選んで購入した割合は、6種類の場合が24種類の場合の6倍以上になったといいます。

この実験から人は選択肢が多すぎると考えることにストレスを感じ、選択を放棄しやすくなることがわかりました。

また、数を脳がどう処理しているかに関するシンプルな実験を1つ紹介します。

モニターに表示された点の数を瞬時に答えるというタスクにおいて、1〜3個の場合の反応時間に大差はありませんでしたが、4つ以上になると急激に反応が遅くなったそうです。(参考10

どうやら、3と4の間には脳の認知機能的に大きな壁があるようで、『なぜ僕は、4人以上の場になると途端に会話が苦手になるのか』(参考11)でも商品の陳列で1〜3列並べた時は列数に比例して売り上げが増加した一方で4列並べた時は売り上げが下がったという筆者の経験談が記述されていました。

私自身は意識したことがありませんでしたが、会議の人数についても3人と4人以上では脳の負担が大きく違っていたのかもしれません。

おわりに


今回は会議参加者の上限について考えてみました。

結果的に上限の人数を決め切ることはできませんでしたが、参考にした認知科学や心理学の分野についてインプットする良い機会となったので個人的には非常に満足です。

とは言え、まったく結論を出さないというのも後味が悪いので、本記事における結論は調べた中でもっとも多かった3〜6人を会議の適正人数として締めようと思います。

 余談ですが、本研究室のテキストゼミで輪読した本の中でも、Jasper(2019)(参考12)はブレインストーミングの適正人数を6人〜8人、Bill&Dave(2019)(参考13)は3人〜6人と述べていました。

2冊とも非常に学ぶことの多い本でしたので、もし興味があれば読んでみてください。

文責:笹川

### 参考

  1. Michael Doyle, David Straus, How to Make Meetings Work!: The New Interaction Method, Berkley, 1993.
  2. Michael Doyle(著), David Straus(著), 斎藤聖美(翻訳),『会議が絶対うまくいく法』, 日本経済新聞出版社, 2003.
  3. 高橋誠, 『会議の進め方』, 日本経済新聞出版社社, 1996.
  4. Shaw, M. E, Comparison of Individuals and Small Groups in the Relational Solution of Complex Problems. American Journal of Psychology. 1932, 44, pp.491-504.
  5. Falk, D. R. & Johnson, D. W., The effects of perspective taking and egocentrism on problem solving in heterogeneous groups. Journal of Social Psychology. 1977, 102, 63-72.
  6. Kasperson, K. J., Scientific creativity: A relationship with information channels. Psychological Reports. 1978, 42, 691-694.
  7. Hoffman, L. R., Applying experimental research on group problem solving to organizations. Journal of Applied Behavior. 1979, 15, 375-391.
  8. 三浦麻子, 飛田操, 集団が創造的であるためにはー集団創造性に対する成員のアイディアの多様性と類似性の影響ー, The Japanese Journal of Experimental Social Psychology, 2002, Vol.41, No.2, 124-136.
  9. 阿形亜子, 釘原直樹, 相互独立的自己観・協調的自己観が社会的手抜きに及ぼす影響, 2008
  10. Heike Wiese, Numbers, Language, and the Human Mind, 2003.
  11. 岩本武範, 『なぜ僕は、4人以上場になると途端に会話が苦手になるのか』, サンマーク出版, 2017.
  12. Jasper Wu, 見崎大悟, 『実践スタンフォード式デザイン思考世界一クリエイティブな問題解決』, インプレス, 2019.
  13. Bill Burnett(著), Dave Evans(著), 千葉敏生(翻訳), 『スタンフォード式人生デザイン講座』, 早川書房, 2019.

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