こんにちは、B4の林です。
今回も情報の偏りについて触れたいと思います。
新型コロナウイルスの影響でここ1年半ほどは、インターネットを利用する場面が私自身かなり増えました。
最近発表されたユーキャン 新語・流行語大賞では、テレビでの単語・話題と同じくらいSNSでの単語・話題がノミネートされていました。
また、TikTokで有名になった曲が流行るなんてことがザラに起こっています
令和2年現在、SNSの利用率は73.8%、知りたいことについて情報を探すために利用している人は62.1%と多くの人がインターネットで情報を得ています[1]。その中で情報が偏ってしまうのは今のシステム上仕方ないことではあります。そのため、話題に対して客観的に広く知ることが困難ですが、大切です。
以下では、情報が偏ることに対する問題について述べます。
アメリカの法学者サンスティーンはネット上の情報収集において、インターネットの持つ同じ思考や主義を持つ者同士をつなげやすいという特徴から、「集団極性化」を引き起こしやすくなる 「サイバーカスケード」 という現象があると指摘しました[2]。
集団極性化とは、例えば集団で討議を行うと討議後に人々の意見が特定方向に先鋭化するような事象を指す。討議の場には自分と異なる意見の人がいるはずなので、討議することで自分とは反対の意見も取り入れられるだろうと思われますが、実際に実験を行ってみると逆に先鋭化する例が多くみられました[3]。
反対の意見を述べる人に、自分の意見を説得するために根拠を集め主張を行うため、集団極性化が起こるように思われます。
「カスケード」とは、階段状に水が流れ落ちていく滝のことであり、人々がインターネット上のある一つの意見に流されていき、それが最終的には大きな流れとなることを「サイバーカスケード」と称しています。
エコーチェンバー現象(エコーチャンバー現象、Echo chamber)とは、 自分と同じ意見があらゆる方向から返ってくる「反響室」のような狭いコミュニティで、同じような意見を見聞きし続けることによって、自分の意見が増幅・強化されること を指します。
Twitterを例にすると想像しやすいと思いますが、自分の興味のある人、意見の一致している人をフォローし、自分の意見をツイートするとします。そうすると、自分のツイートがタイムラインに出てくる人は、自分のことをフォローしている人や趣味嗜好が似ている人なので、反対意見・批判意見が返って来にくい状況が生まれ、肯定する意見ばかりが返ってくるようになります。
このような現象がエコーチェンバー現象です。自身の意見を肯定してもらえる状況というのはかなり心地のいい環境です。話題が些細なことであればさほど問題はないのですが、社会的な問題になった際に、問題になってきます。
SNS上でしか情報を得てこない人にとっては、意見が凝り固まってしまい他の意見を受け入れられない状況になる可能性もあるのです。
もはや受動的に情報を得ていると客観的に判断することが難しい状況もあります。そのため、能動的に検索して自身の持っている情報をより客観的なものに近づける努力が必要です。
ここで、Twitterアカウントの情報からタイムライン上の情報にどれだけの情報や話題の偏りがあるか分析するサービスを東京大学大学院の鳥海不二夫教授(工学系研究科システム創成学専攻)が公開しました[4]。
ユーザーは自身のタイムラインや、フォローしているユーザーの「エコーチェンバー現象」の度合を確認できます。
やり方は、Twitterにログインするだけと簡単なので、試しにやってみました。
アカウント名は黒で隠しました。こうしてみてみると、かなりエコーチェンバー度が高いことがわかります。
このワードクラウドの例は私のものではありませんが、かなり趣味に偏ったワードクラウドが出力されていました。
検索の際にも起こってしまう情報の偏りがあります。
検索の際に自分が既に持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合の良い情報ばかりを集める傾向性のことを 確証バイアス と言います。
例えば、賛否のある話題に対して、「〇〇 賛成」と検索したり、差別の問題に関して「〇〇 差別」と検索したりすると、賛成の意見しか出てこなかったり、差別されている現状しか出てこなかったりします。
実際には賛成意見は少数派かもしれないし、差別はほとんどないかもしれないですが、検索結果を比較しないために自分の意見が世間的にマジョリティなのかマイノリティなのかわかりません。
検索結果だけでなく、検索のクエリに関しても偏りを生じる原因がある可能性があるので、工夫が必要です。
今回も、情報の偏りについて述べました。さまざまな問題を前回と今回で紹介しました。
要するに、情報が偏ってしまって 手に入れられる情報がその話題の全てではない ということです。
何に対しても「フォロー」、「いいね👍」ができる今日では、趣味嗜好を少なからず読み取ることができ、個人が好ましい情報を提供できるようになっています。
そのため今、手に入れられる情報は少なからずフィルターがかかっているので、能動的に客観的な情報を手に入れることが重要です。
何か判断する際の情報を手に入れる際には、検索結果に偏りが生まれていること、検索クエリが欲しい情報を手に入れるための単語になっていないことに気をつけて検索を行うようにしてみてください!
拙い文章でしたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。今回調べた内容が卒業研究に生きてくればと思います。
[1] 令和2年通信利用動向調査の結果, 総務省, p4, https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/210618_1.pdf
[2] 『インターネットは民主主義の敵か』, キャス・サンスティーン, 2001
[3] 総務省(2019)「デジタル化による生活・働き方への影響に関する調査研究」有識者ヒアリング(慶應義塾大学 経済学部 田中辰雄教授)に基づく
[4] エコーチェンバー可視化システムβ版, 鳥海不二夫, 2021
文責: 橋山研究室 林慎己