M1 小川です。
今回の話題は、「インタラクティブミュージック」です。
簡単には、ユーザーの操作などによって変わる、ゲームなどでの音楽体験のことを指します。
「インタラクティブミュージック」は、インタラクション、つまり人が機器に対して何らかの操作をしたときに、
それに呼応するような音楽体験が提供されるようなシステムのことを指します。
文字通り、音楽を用いた人間とコンピュータのインタラクティブなやりとり[1]と言えます。
当記事では、インタラクティブミュージックについて実例を挙げながら、それがもたらす効果や可能性について述べます。
まず、代表的なレースゲームである「マリオカート8」を取り上げます。
このゲームでは、多彩なコースのそれぞれ全てにオリジナルのBGMが割り当てられています。
そのBGMが、コースを走る現在の状況によって変化する、というシステムが備わっています。
一つは、1位で走行している間のBGMが、追加のサウンドの付されるたものになるというもの。
1位になってしばらくすると、少々わかりにくいですがパーカッションが追加されているのが聞こえます。
1位の時のBGMは「イケイケトラック」と呼ばれており、
追加される音はリズムを刻むような音が多く、文字通りノリに乗っているという感じが醸し出されます。
音楽の切り替わりには違和感を感じないようになっています。
むしろ意識して聞かないと場合によってはわからないくらいで、とてもシームレスに移行していますね。
これに関しては、音楽制作でいうところの新たなトラック(パート)を追加するだけですので、
その追加分をフェードイン、アウトさせるなどすれば、あくまで想像ですが切り替わりは違和感なくできそうです。
しかし2位との距離によって差分の音量を変化させている[2]ようで、そのあたりの工夫点も遊んでいて垣間見えます。
また、このゲームでは水の中や雲の中など、さまざまな場所を走行します。
このような特定のシーンに入ったときも、BGMがシームレスに変化するようになっています。
例えば水中に入ると、BGMがくぐもった感じになったり、メロディーの音量が控えめになったりします。
逆に、水中から陸地に出たときに通常のBGMに戻るので、
水中から抜けたという心地よく爽やかなゲーム体験を、BGMによって知覚、あるいは増幅させることができるのです。
例えばアクションゲームにおいて、ステージの切り替わりで音楽が変わる、というのは基本的なインタラクティブサウンドともいえますが、
レースゲームのような流れるように刻一刻と変化する状況に対応してサウンドが滑らかに変わる、というのは、
手の込んだシステムであるとも言えますし、
臨場感や爽快感をもたらす体験としては、非常に有効なものであろうと感じます。
次に挙げるのは、「Splatoon」シリーズです。
このゲームの特徴的なところは、サードパーソンシューティング(TPS)、つまりプレイヤー同士が撃ち合って倒すゲームでありながら、
撃つのは銃弾などではなく「インク」である点です。
撃ったインクは地面を塗り、そしてプレイヤーはこのインクの中に身を潜めることができます。
この潜伏をしばらく続けると、ステージのBGMが静かになる、というのがこのゲームにおける主なインタラクティブサウンドです。
身を潜めて相手が気づかないところを狙う、というシチュエーションもあるため、
身を潜めている間の緊張感を演出するという意味で効果的です。
「Splatoon」の場合も、刻一刻と状況が変化するゲームにおいて、その状況に逐次対応させるように音楽を変化させるという点では、先ほどのマリオカート8の例と同様です。
これらのように、インタラクティブサウンドはより良いゲーム体験を形作る一要素となっています。
ユーザーの操作に呼応した、臨場感のある、豊かな音楽体験を与えることができる手法です。
ユーザーが体感する場面とともに音楽が使用されるというのは、ゲーム特有になる場合が多いのではないかと思います。
現実には、BGMというのは自然状態では当然存在しないものです。
サウンドは、ゲームの大きな一要素です。
「ただ流すだけ」にとどまらず、BGMを変化させるという「遊び」は、ゲームをより印象づける要因となるでしょう。
[1]. インタラクティブ・サウンドの可能性 - シードアシスト。, https://sound.seedassist.co.jp/column/326/ (2022.4.16閲覧)
[2]. 4. イケイケトラック - 社長が訊く『マリオカート7』社内スタッフ篇|ニンテンドー3DS|任天堂, https://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/amkj/vol2/index4.html (2022.4.16閲覧)