FPSゲームにおける瞬間的判断について

column B4 22出口

こんにちは。B4の出口です。 突然ですが、皆さんはどのようなゲームをプレイしたことがありますか? ゲームにもさまざまなジャンルがあります、シューティングゲーム・パズルゲーム・RPGなど……。その中でも最近人気が出ているFPSと呼ばれるジャンルのゲームに絞って、そのプレイ中に行われる瞬間的判断に注目していきます。

FPSとは?

FPSとは一人称視点のシューティングゲームのことです。シューテングゲームには競技性の強い対戦ゲームが多くあり、eスポーツで取り上げられていることもあって、知名度は上がりつつあります。例えばApex Regends, Valorant といったゲームタイトルが最近では人気です。 このゲームでは敵に攻撃することやステージの特徴を把握しながら行動することなど、さまざまなことをプレイ中にしなければいけないのですが、リアルタイムに状況が変化していくことが大きな特徴だと考えています。先ほど例に挙げたゲームだとオンラインで色々な人と対戦をするため、自分が操作している間に相手も違う操作をしています。極端なことを言うと、数秒前には誰もいなかったのに急に敵が現れてきた、なんていう状況がしょっちゅう起こるゲームです。 ゲームのジャンルによって必要なスキルや難しい点が異なりますが、FPSにおいて最も難しいことは瞬時にその時の状況を把握し、判断して行動をするだと私は思っています。つまり、プレイ中に変わっていく状況に対してその都度判断しながらゲームをプレイする必要があります。反射的に行動することやじっくり考えて行動を決定することとは別物と思っていただければ良いかと思います。

瞬間的判断について

なぜ瞬間的判断という点に着目したのかを少しお話ししたいと思います。私自身、このジャンルのゲームをしていて一番難しいなと感じるのが状況判断です。リアルタイムに変化し続けるため、その都度違った判断や行動をしなければいけません。そのため長い時間考えていたら敵にやられてしまいます。その短い時間でより最適な行動を決定できるようにするためにはどのような支援をすれば良いのか、という点に興味があり、この瞬間的判断という部分に着目しました。

ゲームプレイの振り返り支援システム

永沼ら[1]の研究では、ゲームプレイの振り返り支援システムを提案していました。この研究における瞬間的判断とは、認知してから判断し、行動するまでの極めて短い判断のことを指します。 この研究では、プレイ中に瞬間的判断があった箇所に気づくことと、無意識な判断の偏りを自身が理解することを目的に、支援システムを提案していました。

瞬間的判断が行われた箇所を自動抽出する手法として、プレイ動画や操作ログのデータと、その操作の時間間隔によって抽出する方法が用いられています。また、プレイ中にユーザが不利な状況になった箇所を提示するようにもなっています。

結果は、通常の振り返りの方法と比較して、見つけられた癖の数に差は見られませんでしたが、振り返りにかかった時間は短縮されたということがわかりました。

状況判断の支援システム

古池、東本[2]は、瞬間的判断能力の育成システムを提案しています。この研究における瞬間的判断とは、より合理的な判断を短時間で行うことを指します。 この研究では、ゲーム上の各場面において、自身の考えを外化・構造化し、その知識構造を認識しながら行動できるようになることを目的とし、その確認を支援するシステムを提案していました。さらに制限時間内に回答してもらうことで短時間で判断構造を構成することも期待できると著者らは述べていました。

提案されていたシステムは、実際のゲーム画面を用いて判断が必要な状況を図示しながら使用できるようになっているため、より実践的に瞬間的判断の学習が行えると考えられます。

この研究は支援システムの提案だけで、実験などは行っていませんでしたが、このシステムを反復して活用することで瞬間的判断を意識させ、複雑な状況でもより良い判断ができるようになるのではと考察していました。

まとめ

瞬間的判断に関する研究を2つほど挙げました。どちらも初心者を対象に支援を想定したシステムを提案していました。少し瞬間的判断の定義は違いましたが、次に行う行動を短い時間で判断することには変わりません。また、どちらの研究でもFPSでは瞬間的判断を多くしていると述べていることから、より上手にプレイをするには瞬間的判断を適切に行えるようにする必要があると言えます。 初心者にとってプレイ中に正しい判断をするのはかなり難易度が高く、何が起きたのか理解できずに敵にやられてしまうこともあると思います。なので、こういった支援があれば初心者でもこの状況ではこの行動をしよう、とスムーズに判断できるようになるのではないかと感じました。

おわりに

いかがだったでしょうか。今回は、FPSゲームの中でも特に「瞬間的判断」という部分に焦点を当てました。「瞬間的判断」というワードはあまり聞き慣れないかもしれませんが、ゲームをプレイ中、無意識にこの判断をしています。「よし、この作戦で行こう!」と考えていても相手が予想していなかった行動をとってくると自身の作戦を変えざるを得ません。私もFPSを始めた頃はよく経験していました。元々ゲームが好きだったのでその後も継続してやることができましたが、そうではない人だとそのままプレイするのをやめてしまうのではないかと思います。また、始める前から「難しそう、自分にはできない」という先入観からプレイするのを躊躇している人も一定数いるのではと個人的には感じています。そういった人たちが少しでもFPSを「楽しい」と感じるまでプレイできるように上達支援ができればなと思いました。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

参考文献

  1. 永沼優一、山本景子、倉本到、辻野嘉宏:対戦ゲームにおける技術向上のための瞬間的判断の特徴分析支援ツール、情報処理学会研究報告、Vol.2018-HCI-177 No.04、pp.1-8(2018)
  2. 古池謙人、東本崇仁:FPSを対象とした瞬間判断能力の育成システム、人工知能学会研究資料、SIG-ALST-B502-11、pp.50-53(2015)

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