B4 の小川です.
卒業研究では,作業中BGMのテンポの効果について実験をし,調査しました.
2018年度入学(2021年度時点で4年)
音楽に関しては趣味としている面が大きく,音楽の楽しみ方や利用法などがより発展してほしいという考えがありました.
卒業論文では、作業中のBGMのテンポが作業課題に与える影響について実験により検証しました.
BGMの特徴と作業等との関係を調べる研究はいくつかあります.
ジャンル[1],調性変化[2],歌唱の有無[3],テンポ[4]などに着目した研究があります.
この中でもテンポに関して,
買物をするとき,速いBGMが時間あたりの購入件数を増加させ[5],
遅いBGMが行動を緩やかにして店内に留まる時間を延ばす[6]ことが明らかになっています.
これにより,人間の行動に潜在的な影響を与えた音楽のテンポという特徴に注目しました.
BGMのテンポと作業課題(計算)との関係を調べた研究[4]は存在しますが,そこでは有意なテンポの影響は見られていません.
この先行研究での計算課題は,制限時間を設け,できるだけの問題数をその間に解くという形式でした.
しかしこの方式では,被験者はとにかく問題を解くことに注力して,BGMによる違いは見られにくいのではないか,と考えました.
本研究では,以下のような方式をとって実験を行いました.
・一定の問題数を解くまでの時間を作業課題の成績とみなす
・問題数は被験者には伝えない
実験ののち,課題成績および課題遂行に関するアンケートの結果を分析しました.
実験の条件は,BGMなし,(より)遅いBGMあり(bpm132),(より)速いBGMあり(bpm180)の3つでした.
遅いBGMを加工してテンポを速めたものを速いBGMとして使用しました.
計算課題は,先行研究[7]に基づき,4桁÷2桁の余りが出ない割り算を用いました.
画面上に出た問題を見て手元の計算用紙に手計算を行い,解答を画面上に入力して次の問題に進む,という形式でした.
1セットの問題で30問,これを3セット用意し,
問題を解く順序は共通で,条件の順番を被験者ごとに入れ替えて行いました.
結果を分析すると,課題成績に対してBGMの有無・テンポの条件間で有意な差は見られませんでした.
またアンケートから,BGMを作業を行う上で不快と感じる人は多かったことがわかりました.
特に速いBGMは,遅いBGMに比べて有意に不快であるという結果が得られました.
作業中のBGMに対して不快感を覚える人が多く見られたことから,
アンケートに基づき特に不快に感じたという被験者を除いて,条件間の課題成績の比較を行いました.
この場合も,同じく有意な差は見られませんでした.
アンケート結果の分析から,速いBGM条件は,BGMなし条件に比べて集中できないと感じていたことがわかりました.
結果として, ・作業課題(計算)に対して,BGMのテンポによる有意な影響はない ・テンポの速いBGMはより集中を妨げる
ことが示唆されました.